枝野幸男代表は16日夜、新潟県にある東京電力柏崎刈羽原子力発電所が、約1年にわたり核物質防護システムの作動不能、代替措置が実効性を欠いており、不法侵入が複数箇所に行なえる状況であり、核物質防護に関わる4段階の評価のうち最も深刻なレベルに相当すると、原子力規制委員会の更田豊志委員長が発表したことを受け、記者団の取材に応じました。

 枝野代表は、「(更田)委員長の会見を拝見し、相当な危機感と怒りが込められた会見だった」と語り、経済産業大臣経験者であり、同じ東京電力による福島第一原発事故当時の官房長官であり、そして東京電力の原子力に関する意識改革を強く促してきた立場から、「遺憾という言葉を超えて、怒りで一杯」だと断じました。

 そして、「原子力発電所を運営する資格能力があるのか」「ちょうど10年の節目を迎えた福島第一原子力発電所事故に対する反省が、どこへ行ってしまったのか」と述べるとともに、例年東京電力の社長が3月11日に福島で訓示を行い、現地で会見に応じていましたが、今年はその要請を断ったことにも触れ、「このことだけでも10年前の反省は忘れたのかと、どこかで指摘をしようと思っていた」と述べました。

 また、今回、抜き打ち検査等を行ったことで、こうした事実が発覚したことから、原子力規制庁と原子力規制委員会には敬意を表しました。そして、「他の所にあるとは思いたくありませんが」と前置きした上で、他の原子力発電所でも抜き打ち検査を行う必要性について言及しました。

 記者からの主な質問とその回答(要旨)は以下のとおりです。

Q:柏崎刈羽原子力発電所は、昨年中央制御室に不正侵入ができるような体制になっていたことが大きな問題となった。核物質防護は国際条約に定められた国際的な要請ですが、それが守れていないことについてどのように考えているか

 ご指摘いただいたとおり、国際的に守らなければならない基準であります。国内だけではなく、国際的にも、しかも今日の委員長の会見を聞いておりますと、非常に初歩的と言いますか、あるいは意図的とも疑われるような状況であれば、とても原子力発電所を運営する資格はないと断じざるを得ません。

Q:一連の東京電力の問題を受けて、地元では再稼働に対して非常に強い危機感を持っている。改めて、立憲民主党として、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働についてはどのように考えているか

 再稼働以前の問題。そもそも原子力発電所を運営する資格があるのかが、いま問われている。稼働どころではないという状況だと思っています。

Q:規制庁に対しては敬意を表したいとおっしゃいましたが、政府側に何か責任があるとはお考えではないでしょうか

 具体的にどういう検査を従来してきたのか等について、まだ今日の会見では明らかになっておりません。むしろ先ほどのIDの不正使用などが契機になり、徹底してやらないといけないという危機感を持って、実際にそうした対応をされたという報告ですので、それについては評価をすべきだと思っています。
 むしろ責任の問題は、一つは事業所管省庁としての経済産業省・資源エネルギー庁、ここの責任は問われなければいけないと思っています。事業所管と規制の分離をしましたが、事業所管省庁は経済産業省です。原発事故を受け、安全や核防護について徹底させることを事業所管省庁として経産省がこの間何をやってきたのか。しかも、いま国が株主となり、実際には経済産業省からも人を逆に送り込んでいる。こういう状況のなかで、こんなことになっているのは、経済産業省の責任は免れないと思っていますし、当然東京電力の経営陣の責任は問われると思っています。

Q:東京電力以外の電力会社の原発についても、抜き打ち検査をすべきだとお考えでしょうか

 さすがにこのようなあまりにも酷い事例を、他の原子力発電所がやっていると思いたくありませんが、でも現実に考えられないことが起こっているわけですから。抜き打ち的な検査を行ったことで今回発覚させることができ、かなり効果があったのではないかと、明言されていませんが、委員長の会見を聞いている限りでは感じられますので、そうしたことに規制庁には期待をしたいと思います。

Q:経産省や東電の責任について言及をされましたが、今後国会でどのような対応をとっていきたいとお考えでしょうか

 いま国対委員長とも相談をしてここに参りましたが、私は最重要案件として位置づけてくれと。他にも重要な案件はありますが、COVID-19対応と並ぶ、まさに命に関わりかねない問題ですから、そういう扱いをしてくれと国対委員長にはお願いをしております。

Q:日本海側の原発については、民間に警備を任せていて丸腰だという心配というか懸念もありました。今後警備などついて、どうしたらいいように思われますか

 そういった意味では、そもそも日本において非常に強力な武力などを用いたテロなどに対して、本当に核防護が機能するのかという本質問題があり、これもわれわれが原子力発電はやめるべきだということの大きな理由の一つだと思っています。
 ただ仮に原子力発電所を使わなくても、現に存在している核物質の防護は必要なわけであります。これは電力会社が直接全面的に核防護については自社社員がやるべきであると。外注を出すべきでないと。責任は全て発電所・電力会社が負うべきであると思っていますし、また警察等の体制についても、場合によっては自衛隊が連動することを含めて、徹底的にやるべきだと経産大臣時代にはそういう方針を示しておりましたが、残念ながらそこから8年間、止まっているというのを残念に思っています。

(その他の質問)

Q:今日の総務省の問題について、予算委員会では両者の意見が食い違っているのことが浮き彫りになりました。今後どのように総務省と東北新社は説明責任を果たしていくべきとお考えでしょうか

 個別の案件は官官(つかさつかさ)にお任せをしてきておりますが、あえて一点だけ申し上げると、今日の予算委員会で、わが党の質問に対して、外資比率の問題について当時の総務課長に言った言わないという話で、双方の発言が食い違っておりましたが、東北新社の社長の証言は非常に具体的なものであります。一方で、総務省の元課長の証言は全く具体性に欠けております。これが民事裁判なら、これは会っていたと認定されてもおかしくない。それはもう既に今日明らかになっている。そうでないならば反証をあげる責任は総務省の元課長の側にある。今日の発言を聞く限りは、これは会っていたと。東北新社側の証言が、信憑性が高いという認定が十分可能な質疑だったと思っています。

https://cdp-japan.jp/news/20210316_0957