【産経オンライン】産経新聞社が衆院選への影響を試算したところ、自民は昨年10月の前回衆院選で獲得した小選挙区の132議席のうち、約2~4割を失う可能性があることが分かった。自民が小選挙区で獲得した票数から、公明の比例票と同数がなくなった場合、52議席減となる。選挙協力に依存してきた自民議員は、「公明票」が多い小選挙区ほど厳しい戦いを強いられそうだ。
■小選挙区で公明票は平均2万票か 公明は支持母体・創価学会の強固な組織票を持つ。自公連立体制では、公明は候補者を擁立しない小選挙区で支持者に自民への投票を呼び掛ける一方、自民も比例で公明への投票を呼び掛ける選挙協力が行われてきた。公明の衆院選比例代表の得票数は、2005年の898万票をピークに年々減少し、昨年10月の前回衆院選は596万票だった。 試算では、各小選挙区で公明が獲得した比例票と同数が、自民候補から離れると想定。比例代表での得票数は各党とも前回選のままと仮定した。無所属として戦い、当選後に自民入りした萩生田光一幹事長代行らは対象から外した。 その結果、自民は公明票が離れると52議席を失うことが分かった。このうち39議席は立憲民主が獲得し、立民が比較第一党に躍り出る。 比例票を小選挙区ごとにみると、公明票は平均で2万638票あった。最も多い大阪6区は3万6229票。大阪や福岡を中心に西日本の選挙区が上位10傑を占めた。全国的にみれば少ない北陸でも、1万前後の票があった。 さらに細分化して市区町村レベルでみると、公明の比例得票率が40%を超える地域もあった。沖縄県の先島諸島にある多良間村では、比例代表に投票された約431票のうち、44.5%にあたる192票が公明票だった。1万以上の投票があった地域でも、沖縄県名護市では2万5152票のうち公明票が4分の1に上った。多良間村を含む沖縄4区、名護市を含む沖縄3区とも自民候補が当選している。
■公明と他の野党の協力も焦点に
前回衆院選で自民が勝利した132選挙区について、他党候補との具体的な票差と、公明票の影響についても試算した。高市早苗総裁や総理、閣僚経験者ら自民有力議員は、選挙区で次点候補に7万票超の大差をつけており、公明票が離れてライバル候補に上乗せされても当選は揺るがない。一方で、公明票を失うと厳しい選挙戦を強いられる自民議員は数多い。各選挙区で、公明が立憲民主など他党に協力するかどうかも焦点になりそうだ。
ただし、試算のベースとなっている比例の公明票には、小選挙区で協力を得た自民支持者の票が一定程度含まれている点には留意が必要だ。
また、公明が候補を擁立した小選挙区では、自民は擁立を見送って公明に協力してきた。小選挙区の公明候補が自民の比例票と同数を失えば、斉藤鉄夫代表や岡本三成政調会長らの4議席を全て失う計算になる。このため公明は小選挙区からの撤退も視野に入れているとみられている。
自民との連立協議を行っている維新は、議員定数の削減を掲げる。仮に比例代表の定数が削減されると、比例代表に注力する公明はさらなる党勢縮小の危機に直面する。連立を組んできた自民、公明ともに、次期衆院選では予測できないリスクが待ち受けている。(データアナリスト 西山諒)