当事者から速やかな成立を求められているもの、当事者からは改正でなく廃止まで求められているものなどがあり、一括に審議すべき法案でないことは明白だ

障害者総合支援法などの一括改正に際し、

「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」(障害者総合支援法などの改正案)の趣旨説明・質疑が行われ、「立憲民主・社民」を代表して打越さく良議員が登壇。(1)障害者の住宅確保の問題(2)精神保健福祉法第1条の条文後段にある「発生の予防」の意味(3)国連障害者権利委員会勧告との関係(4)障害当事者参画に実効性を持たせるための今後の方策(5) 医療観察法の病床整備――等について、加藤厚生労働大臣の見解をただしました。

 打越議員ははじめに、「日本国憲法は、国民の権利を保障する第三章の総則として、『すべて国民は個人として尊重される』と規定、ただ、個人であるという理由だけでその尊厳を尊重すべきであると定めている。ところが、精神障害のある方への法制度は、いまだに、この国が、『個人の尊厳の尊重』という憲法が最も大切にしているはずの価値を定着させることができていないことに加担してきたのではないかとの問題意識から質問を行っていく」と表明。

 法案審議の在り方については今回、障害者総合支援法、精神保健福祉法、障害者雇用促進法、難病法、児童福祉法の改正を1つの法案として束ねて審議しようとしていることを問題視。「立法府を軽んずるものであり、それぞれの法案が丁寧に審議されるべき。審議にあたっては、それぞれの障害当事者、難病患者やご家族のご意見を聞きながら審議を行う必要があり、さまざまな課題を一括りに審議すべきでない。そのような声をいちいち聞く必要はないと考えているのか」と、加藤厚労大臣の見解を尋ねました。

 加藤厚労大臣は、精神障害者を含む障害者や、難病患者等の医療・福祉・雇用の各施策の充実と、相互の連携強化を図るためには、これらの総合的な見直しが必要であることから、関係する法律を一体的に見直すことにしたと説明。「審議において丁寧に説明を尽くす」と述べました。 

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 打越議員は精神保健福祉法案について、本年9月に公表された、国連障害者権利条約に基づく日本政府への総括所見の中で、障害者権利委員から障害者権利条約の第19条「自立した生活と地域生活への包容」に関する是正勧告があったことに言及。「障害児を含む障害者が施設を出て地域で暮らす権利が保障されていない」ことから「脱施設化」を勧告するとともに、精神科病院の強制入院を障害に基づく「差別である」とし、法令の廃止も求められていると述べ、「精神障害のある方が、期限のない入院を長く強いられ隔離される現状は、憲法の個人の尊重の要請にも、障害者権利条約の要請からしても、問題があることは明らか。なぜ9月の勧告を無視し、10月に閣議決定、国会提出に踏み切ったのか。拙速だったのではないか」とただしました。

 加藤厚労大臣は、「勧告の趣旨を踏まえ、障害者の希望に応じた地域生活の実現、いっそうの権利擁護の確保に引き続き取り組んでいく。本人の同意がない場合の入院制度の在り方等については、今般の改正法の附則第3条に検討規定を設けている。勧告の趣旨も踏まえながら精神障害者等の意見を聞きつつ、速やかな検討に着手していく」などと答えるにとどまりました。

 打越議員は最後に、「本法案は当事者から速やかな成立を求められているもの、当事者からは改正でなく廃止まで求められているものなどがあり、一括に審議すべき法案でないことは明白だ」とあらためて指摘。政府提出法案については、分離して審議、採決を行うなど良識の府である本院の姿勢を示すだと訴え、質問を締めくくりました。

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