衆議院の予算委員会で25日、内外の諸課題についての集中審議が行われ、立憲民主党会派のトップバッターとして枝野幸男代表が質問に立ちました。この質疑の中で枝野代表は、(1)安倍前総理事務所による「桜を見る会」前夜祭費用の補てん疑惑、(2)GoToトラベル、GoToイートの見直しを含む、政府の新型コロナウイルス対策――について取り上げました。

安倍前総理事務所による「桜を見る会」前夜祭費用の補填疑惑

 冒頭、枝野代表は「われわれは、明細や領収書などを出していただければ、この問題はすぐに結論が出るんだと求めてまいりましたが、まさにその通りだったということが今回、明らかになった」と、これまでの野党側の主張が正しかったことが裏付けられつつあるとの認識を示しました。その上で、この問題は総理が国会に対して嘘をついていたかもしれない問題であり「刑事事件の問題とは全く切り離して、国会としてしっかりと実体真相を明らかにしなければならない」との姿勢を明確に示しました。

 さらに野党から「しっかり確認してくれ」と繰り返し求められた事について、確認もろくにしないまま間違ったことを言っていた――そのことについて現在の総理として安倍前総理に対し、国会での説明を促すのは当然ではないかと菅総理の責任をただしましたが、菅総理は「国会のことについては、国会でお決めになるべき」と責任を転嫁する姿勢に終始しました。

 また菅総理が、前政権において官房長官を務めており、この問題に関しても何度も国会で答弁していたことについて触れ、「さまざまな危機管理に関わるのが官房長官だ。官房長官が知らなかったなんて言い訳は通用しない。菅総理自身、この問題についての責任、どう感じているのか」と菅総理自身の責任を問いました。これに対し菅総理は「私自身も、安倍総理が国会において答弁された内容について(安倍)総理に確認し、答弁してきたところであります」と、官房長官時代、この問題を巡り、自身が国会で答弁した内容が、客観的な資料に基づいていない可能性を含んだ発言をしました。

GoToトラベル、イートの見直しを含む、政府の新型コロナウイルス対策

 「第3波と残念ながら言わざるを得ない状況」において、「感染拡大防止と経済対策は、車の両輪ではない。ベースには(あくまで)『感染の抑制』がある。(感染が)抑制されているから社会活動ができて、経済を回していける」との基本的な認識を示しつつ、枝野代表は、政府の新型コロナウイルス対策・経済対策を批判しました。

 枝野代表はまず、現在の感染拡大の原因について、政府の考え方をただしました。「感染防止策等々が講じられていない中、人の動きが増えてきている。さらに気温の低下」(田村厚労相)と、政府側が答弁すると、人同士の接触を8割減らそうとした今年春ごろの政府方針と、現在のGoToキャンペーンの政策の方向性が真逆であることを指摘し、以前の方針が間違っていたのか政府をただしました。その上で、「政府が人の移動や会食を推奨する以上は、(感染が)広がるリスクを抑え込めるだけの感染拡大防止策を、政府として取らなければいけない。それがなされていないまま旅行や会食を推奨する政策を取り、結果として感染が広がっているのではないか」と政府のこれまでの対応を批判しました。「これがいけないから感染拡大防止策を徹底しろと、特に検査の拡大をすべきだと、ずっと言い続けてきた」と指摘し、これまで野党が訴えてきた検査体制の拡充が遅々として進んでいない点も批判しました。

 さらにこの検査体制の拡充について枝野代表は、民間機関の検査体制が急速に充実しつつあることを取り上げ、自身も地方出張の前には民間機関による検査を利用していることを紹介。こうした民間検査を国が助成すべきではないか、と主張し、その活用事例として、GoToトラベルを利用する旅行客に対する抗原検査などを挙げました。「検査を支援をしながら、そして感染拡大のリスクが非常に小さいという状況の中で、安心してさまざまな社会活動をして下さいというほうが、余程、抜本的な解決策ではないか」と政府の基本姿勢に疑問を投げかけました。

 またこれと並行して「確かに観光関連事業者の皆さん、大変厳しい状況でした。だからわれわれは補償しろと、事実上の補償をしろということを申し上げてきました。しかしその補償を十分にしてこない中では、それはお客さんに来てもらわなければ事業が成り立ちませんよ」と政府が観光事業者等に対する補償に消極的な一方で、あくまでGoToキャンペーン事業に固執している点を批判しました。

 最後に枝野代表は、「キャンペーンなどを進めた結果、長い目で見たら感染拡大が広がり、この冬の時期の観光業者に大きな影響を与えることになってしまったと思っている。いま使える7兆円の予備費を使い、観光事業者を守り、検査拡充をすること、それが政府の責任だ」と述べ、この日の質問を締めくくりました。

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新型コロナウイルス対策についての主なやり取り
枝野代表の問いかけ 政府側の答弁
なぜ今こんなに感染が急増してるのか 感染防止策等等が講じられていない中、人の動きが増えてきている。さらに気温の低下。(田村厚労大臣)
人の活動を減らす、という春先の政府方針は間違っていたのか いろいろな経験の下でですね、いろいろな対応をしてきております。(田村厚労大臣)
GoToトラベルが人の移動を政府が推奨したため、感染が過去最大になっているのでは

約4000万人が利用しており、現実にコロナの陽性になった方は180数名。このGoToトラベルによって、地域経済を支えてる。分科会の専門家の意見も聞き入れつつ方針を策定している。(菅総理)

感染者に対して全員に対してGoTo利用の有無をチェックしたのか 利用された4000万についてまず全員に検温しておりますし、その後全てフォローしている。(赤羽国交大臣)
感染経路不明は、直近どれくらいか 直近の数字で25.9%。東京は54.8%、大阪は64.8%。日々確認しながら対応している。(西村経済再生大臣)

キャンセルをされた事業者に対しては、35%しか補てんをしない。GoToをやったせいで逆に旅行事業者に損失を与えたのでは

おそらく全額すべて綺麗に払った額よりもそれを上回る額のキャンセル料として支払いをするということになる。(赤羽国交大臣)
われわれは補償しろと、事実上の補償をしろということを申し上げてきた。しかしその補償を十分にしてこない中では、それはお客さんに来てもらわなければ事業が成り立たない。このGoToに使ってきたお金、そしてまだ7兆円予備費が残っているというお金、これをどうしても潰れてしまいそうな、それを潰さないために直接支援をする事の方が、中長期的に感染の拡大を抑えて、そして観光事業者を持続させることにつながったのではないか。いまの状況において、経済を回していくためには、車の両輪ではない。ベースには感染の抑制がある。抑制されているから社会活動ができて、経済を回していける。そうではありませんか 経済活動・社会活動と両立を図っていくためには、感染防止策は徹底すると申し上げてきました。データに基づいて――例えば映画館もプロ野球場も一定程度は入っても大丈夫だと。ただ一定の地域についてはまさに緊急事態宣言が視野に入る、その前段階で、一定の制約をかけていかなきゃいけない。(西村経済再生大臣)

それ(人の移動や会食)を政府が推奨する以上は、それによって(感染が)広がるかもしれないリスク以上の感染拡大防止策を政府として取らなきゃいけない。それがなされていないまま、旅行を推奨し、会食推奨する政策を取って、そして結果として、実際に感染が広がっている。これがいけないから感染拡大防止策を徹底しろと、ずっと言い続けてきました。特に検査の拡大をしろと。なぜこの感染の検査の拡大をしてきていないのか

検査はご承知の通り拡充をしてきておりまして、蓋然性の高い方々は特にですね、地域も含めて行政検査をやっていただくように、特に自治体にはお願いしております。一般の集団に広く検査を行った場合は、接触者調査とそれに基づく隔離以上に感染を減らす可能性は低いとの専門誌論文がある。(田村厚労大臣)

民間の検査能力を厚労省は把握しているのか

ご協力いただいているところは掲載させて頂いており、かなりの部分はですね、この検査数として民間の分も含めてご掲載をさせて頂いてると考えております。(田村厚労大臣)

どれくらい協力しもらっているのか

あの、実態として分かっているわけじゃありません。(田村厚労大臣)

民間機関の検査能力は急速に向上しつつあるし、広まりつつある。こうした検査を助成すれば、人々が安心し、経済が回ることにもつながるのではないか

感染拡大防止を最優先としながら、経済も回して行かなければならない。でなければ、地域が廃れてしまう。(菅総理)

ちゃんと検査を支援をしながら、そして安心して感染拡大のリスクが非常に小さいという状況の中で、さまざまな社会活動をしてくださいということの方が、余程、抜本的な解決策ではないですか

地域経済を支える中で極めて有力なのが、このトラベルだという判断をしております。もしこうしたことに勝るものがあれば、そうしたものも当然ご提案いただければ、受入れをさせて頂く。(菅総理)

私たちは春先から検査をできるだけ拡大しろと。感染のリスクがあるところには検査を広げていくことが感染拡大を抑えることだとずっと提案をしてきています。お客さんが減って困ってるところについては補償をしろと。直接支払いをしろと。そのことによって、事業の継続をしっかりさせろと。持続化給付金があっても、これだけでは、1回では足りないでしょ。そういった提案はしています。多くの皆さんにとって、(方針が)はっきりしないので、従来の予定通り全国各地の観光地は大変な人でした。交通機関も大変な混雑でした。政府はブレーキを踏んでいるのですか、それともアクセルを踏み続けてるのですか

感染増加が見られる地域と連携を取りながらですね、まさに検査の拡充――北海道札幌市あるいは大阪――3倍も4倍も今、検査件数を、その10月半ばから現時点まで増やして行ってます。東京も倍近くなってるんだと思います。私ども検査についてもですね、リスクのあるところ、これについては重点的に戦略的にやっていくということで進めてるところであります。暮らしと命、両方守るという観点から経済対策もしっかり取りまとめていきたい。(西村経済再生大臣)