衆院国土交通委員会で2日、「水循環基本法の一部を改正する法律案」が起草され、全会一致で可決されました。

 採決に先立ち、提案者を代表して同委員会の野党筆頭理事をつとめる小宮山泰子議員が趣旨説明をおこないました。
 小宮山議員は地下水について「身近な水源として多様な用途に利用され、広く地域の社会や文化と関わっている一方で、地盤沈下をはじめとする地下水の過剰採取による障害は、その回復に極めて長期間を要する。また、地下水は一般的に地域性が極めて高く、その挙動や水収支等の実態が不明な地域が多いことから、新たに地下水の採取を制限する条例を設けようとする地方公共団体はその実態の調査を行う必要があることや、地下水が地方公共団体の境界を越えて流動するものであることから、地下水に対する取り組みをおこなうにあたっては、関係地方公共団体、関係者等からなる協議の場を設ける必要がある」と説明しました。
 そのうえで、これらの課題に対応し、地下水に関する健全な水循環の維持回復のため、国及び地方公共団体において、地下水マネジメントの取り組みをいっそう推進することが求められているとし、次のとおり具体的な内容を挙げました。
 (1)国が総合的に策定し、実施する水循環に関する施策として、地下水の適正な保全及び利用に関する施策を明記すること
 (2)水循環に関する基本的施策に地下水の適正な保全及び利用の規定を追加し、国と地方公共団体は、地下水の適正な保全と利用を図るため、地域の実情に応じ、地下水に関する観測又は調査による情報の収集、整理、分析、公表及び保存、地下水の適正な保全及び利用に関する協議をおこなう組織の設置、地下水の採取の制限等の必要な措置を講ずるよう努めること

水循環基本法改正案 趣旨説明.pdf

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 続いて、立憲民主党から森山浩行議員が質問に立ち、自身が水制度改革議員連盟の事務局長として取り組んだ水循環基本法制定の経緯を紹介したうえで、地下水を対象にすることを明記する意義について提案者に尋ね、地下水の適正な保存と利用を図るため国と地方自治体が一体となって取り組むための基盤として、地下水を法文上に明記することになったとの答弁を得ました。
 また、さまざまな主体が協力して流域を管理することが重要だと指摘し、今国会で流域治水関連法が成立したことを受け、できるだけ多くの人が参加し流域水循環計画に収れんする形でさらなる協力を推進すべきだと主張しました。

 提案者として答弁に立った小宮山議員は「水循環は治水、利水、上下水道、森林、気象、海洋、農業など多くの側面で成り立っている。そのいずれの分野でも人の問題に直面している。地域の水を守る人の問題を解決することが、技術、国民の知識や行動の変化も含めた健全な水循環の維持・回復につながるものと考えている。地域で多くの主体が参加してそれぞれの知見を持ち寄り、協力してその流域に合った流域水循環計画を立てて実行していくことにつながる」と述べました。

 森山議員は、「命の水を守ることは党派を超えた課題。これからも国会全体で取り組んでまいりたい」と呼びかけ、発言を終えました。

 改正案が全会一致で可決された後、地下水の適正な保全及び利用に関する決議が全会一致で可決されました。

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https://cdp-japan.jp/news/20210602_1459