「役所の姿で出生率が高まる訳でもないし、省庁ができれば、当事者が幸せになるということでもない。やはり子育て世帯、あるいは子ども本人に対してどのような支援策が届くのかということが最も大事。まず必要なのは予算だ」(泉健太政務調査会長)。

 15日、泉健太政調査会長が国会内で定例の記者会見を開きました。会見の中で泉会長は(1)菅総理のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対応(2)高齢者向けのワクチン接種(3)子育ての現場における、子どもの性犯罪被害防止策(4)「こども庁」設置(5)東京電力・福島第一原発処理水の海洋放出(6)東京オリンピック・パラリンピック開催の是非――等のテーマについて言及しました。

■菅総理のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対応

 新型コロナウイルスの感染状況について、菅総理が「全国的に大きなうねりとはなっていない」と国会で発言したことについて、泉会長は「それではそれ(第4波)が実現するまで待つのですかという話だ。全国的に大きなうねりとなるまで『第4波』と呼ばないということは、むしろ多くの国民に誤ったメッセージを伝える」とその発言を強く批判しました。

■高齢者向けのワクチン接種の開始

 高齢者向けのワクチン接種の開始については「本格的な接種の開始とは言えない。医療従事者の2回目接種の完了もまだ1割という状況のまま、これから高齢者向けの接種を増やしていくことになる」と指摘。高齢者に接種をおこなう前に(接種にあたる)医療関係者の接種を済ませるべきと表明しました。

 本日(15日)、菅総理の米国訪問に向け出発が予定されていることにも触れ、「6月末までには少なくとも1億回分を確保できるという見通しが、約1カ月前に示された。今月12日の決算行政委員会でも、ほぼ同様のことを政府は主張している。しかし国民あるいは自治体、医療現場からすれば、やはり今後の供給の先行きを確定させてもらうのが大事。いつまでも『見込み』や『見通し』ということではいけない。総理が訪米をされるのであれば、国民に明確に出せるメッセージを持って帰ってきて頂きたい」と要望しました。

 また泉会長は、党のワクチン接種課題検討プロジェクトチームが第2次提言をまとめている最中であることもあきらかにしました。

■子育ての現場における、子どもの性犯罪被害防止策

 本日の党・政調審議会では、子どもたちを性犯罪被害から守るための政策について、中間報告を諮る予定であると述べました。「わが党も学校教員、保育士、又はベビーシッターなど、子どもに関わる職種のすべてについて、やはりこういったわいせつ行為の被害を防いでいくことが必要だと考えている。現在検討中の中間報告案だが、再犯防止のために、わいせつ行為をした者を2度と子どもに関わる職種につかせないことを可能にすることを検討している。3つの柱があり、まず教員免許や保育士資格を持っていた者の欠格期間、これを今よりも延長するというのが1つ目。2つ目の柱が、免許授与権者に裁量を設けて、免許を与えないことを可能とするということ。それに3つ目が、子どもへの性犯罪歴の情報管理を行い、不適格者ではないということを確認した上で採用できる仕組みを作っていくということ。この3つを柱とし、さらには子どもに対する犯罪の厳罰化や時効の廃止等も検討したい」と泉会長は述べました。

■「こども庁」の設置

 自民党で議論をしているこども庁の設置について、泉会長は「少子化対策、子育て環境の向上という観点や、子育ての現場、そして当事者の立場から言えば、まず必要なのは予算。組織の組み替えをすれば、現場の環境が良くなるというものではない」と釘を刺しました。その上で「役所の姿で出生率が高まる訳でもないし、役所の姿で当事者が前向きになれる訳でもない。やはり子育て世帯、あるいは子ども本人に対してどのような支援策が届くのかということが最も大事だ。このことを改めて強調しておきたい。省庁ができれば、当事者が幸せになるということではない」と述べました。また党内でこのテーマを議論するワーキングチームが設置されたこともあわせて報告しました。

 今月国会で審議入りした児童手当の「特例給付」を廃止する法案についても触れ、「政府は、全く真逆のメッセージ、『子育て罰』のメッセージを出そうとしている。自民党が急きょ、盛り上がってきたこのこども庁について本気で取り組むと言うのであれば、この特例給付の廃止法案については取り下げて頂きたい」と特例給付廃止の取り下げを訴えました。それとともに「自民党ではこのこども庁を最初、構想する時に子育て関連予算を8兆円規模にしていくという話からスタートしたとも聞いている。それは是非、共に実現をしたい。その予算の実現なくして、現場の改善はない」と予算拡充の重要性を改めて強調しました。

 その上で「何もこども庁が出来てからでなければ予算を用意できない訳ではない。こども庁を作る前提で構わないので、子育て予算の大幅拡充についての具体案を、政府与党に早急に出して頂きたい」と、具体案の提示を政府与党に呼びかけました。

■東京電力・福島第一原発処理水の海洋放出

 東電・福島第一原発の処理水を海洋放出する方針を政府が固めたことについて泉会長は「枝野代表をはじめとして、わが党の復興本部から繰り返し言っている通りだ。やはり福島県民、漁業関係者、そして国民に対しても説明が不十分であり、そしてもうすでに風評被害を受けているということだ。立憲民主党は、この復興本部から政府に対する申し入れの中で、やはりまずやるべきは『風評対策、地元への説明、そして他の技術の検討』、この3つを最優先すべきだと主張してきた」と述べました。その上で「どこかの時期で、何らかの方針は決めなければいけないのかもしれない。しかしやはり一番の当事者である県民や漁業関係者とのコミュニケーション、これは不可欠だし、その理解も当然必要。そしてさらにはわが国全体、そして世界への理解も必要になってくる。政府はその努力を欠いてきた」と、政府の対応を批判しました。

 また周辺国への対応については「私はまずは冷静に反応していただくべきだろうと思っている。昨日も韓国大使館を呼んで話を致した。それは韓国政府の反応として、いささか過剰ではないかと私が感じていたからだ。『日本政府は、いかなる方向であっても当然、国際基準を守るということが大前提だと思っているし、何も世界に隠すようなことであってはいけないと考えている。そこは信頼をしていただきたい』と申し上げた」と述べました。

■東京オリンピック・パラリンピック開催の是非

 東京オリンピック・パラリンピックの開催について自民党の二階俊博幹事長が「その時の状況で判断せざるを得ない。これ以上無理だってことだったら、スパッと止めないといけない」とテレビ番組の収録で発言したと伝えられていることについて意見を求められると、「やはり大事なのは早めの判断、早期の判断。これを示していただくことだと思う」「アスリートおよびその関係者、そして今、現に聖火リレーに関わっている方など、五輪に関わる全ての方々。このコロナ禍で切迫している医療関係者、またさまざまな事業を想定している宿泊業や旅行業などの事業者の方々には、大きな影響が及ぶ」との見解を示しました。 

 また科学的な見地から客観的な判断基準を設けているイギリス政府の例に触れた上で「日本においてもそういった対応が問われているのではないか。自民党の最高幹部のお一人がそれだけのことを言うのであれば、やはり早急に政府与党で話を詰めて頂きたい。多くの事業者が予見可能な状況をつくる、またオリンピックに関係する方々や医療関係者が安心して先々のことを考えられるような環境を早期に作って頂きたい」と述べました。

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https://cdp-japan.jp/news/20210415_1183