立憲民主党は21日、「消費者の権利実現法案」(消費者被害の発生及び拡大の防止並びに消費者の利益の一層の擁護及び増進を図るための消費者契約法等の一部を改正する法律案)を衆院に日本共産党、国民民主党と共同提出しました。この法案は、政府提出の「特定商取引法等改正案」(消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案)の対案として提出しました。立憲民主党から川内博史政調会長代行、柚木道義消費者部会副部会長、大西健介政調会長代理、吉田統彦、尾辻かな子、青山大人各議員が衆院事務総長への法案提出に参加しました。中島克仁、大河原雅子、稲富修二、堀越啓仁各議員も提出者です。

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 法案提出後、提出者は記者団の取材に応じました。
 川内政調会長代行は、本法案は22日の衆院本会議で、政府提出の特定商取引法ならびに預託法改正案の対案として審議されると紹介し、法案提出の趣旨について「この間、さまざまな消費者被害が発生してきている。デジタル化や高齢化の進展、成年年齢の引き下げ、さらには新型コロナウイルス感染症の影響で自宅に一人でいることの多い状況の中、さらなる消費者被害が懸念される状況だが、政府案は不十分。消費者契約法の前回改正時に付帯決議に、つけ込み型の勧誘に関しては包括的に取消権を創設すべきである(という項目)があったが、政府案に今回それが入っていない」ので、対案を提案することにしたと説明しました。
 川内議員は「被害が一番拡大してしまうのが、契約したことが家族や友人等に伝わらない、分からないということで起こる。今回デジタル化の流れの中で契約書面をデジタル、電磁式書面で構わないという改正が盛り込まれているが、対案では契約書等の電子化はしない。とにかく書面にサインをする行為こそが(被害を防止する)砦。消費者団体の皆さんや、日弁連の先生方が大変心配をされている。そのため、政府案の契約書面の電子化の規定を全面的に削除することを盛り込んだ」「さらに、成年年齢引き下げの措置として、法制審でも18歳19歳は特別な年齢であると指摘されているので、この方たちについて当分の間、クーリングオフを期間を延長することによって未成年者取消権に代わる法的な措置を講ずる」ことにしたと説明しました。政府案と対案のどちらがより消費者の利益を守ることにつながるのか、消費者被害を防止できるのかという観点で議論していきたいと表明しました。

 尾辻議員は「消費者庁は消費者を守るためにあるが、今までのさまざまな法律が事業者に遠慮して、消費者を守る力が弱かった。その歪みを今回の法案で直して行こうというもの。消費者契約法の改正に関して、成年年齢の引き下げがあるが故に、社会生活上の経験が乏しい等の条件が入ってしまい、本来もっと多くの方に使っていただきたい取消権が、要件が非常に狭まってしまった。今回はこれをなくしてしまい、本来の消費者契約法が持つ法律に戻して行こうということだと思っている。契約書のデジタル化については、契約書が実物でなければ、高齢者の方々が契約をしたとしても、たとえばへルパーさんや家族が気が付かないということが起きる。消費者団体からもこれは絶対に許さない、削除してほしいと要望があった。対案を通して削除を求めていきたい。この法案の方が、より消費者のためになるものだと思っている」と述べました。

 大西議員は「契約書面の電子化は本当に大きな問題。多くの場合、家族、ヘルパーが怪しい契約書を発見して、そこから契約の取り消し等の手続きが始まるが、それがなくなってしまう。また、多くの高齢者の方はスマホで契約書面をPDFで保存する仕方が分からなかったり、長期の契約になるとその間にスマホが変わったり、買い替えてしまったりということも起こるので大変大きな問題だ。あわせて、これが決まった経緯にも問題がある。政府は消費者から求めがあったかのようなことを言っているが、そのようなことはない」と述べ、法案が決まった経緯についても審議で追及していく考えを示しました。

 吉田議員は「書面の電子化はいろいろな弊害があると感じている。私がアメリカにいた時に、さまざまな書類、たとえばインフォームド・コンセントが電子化される中で弊害が出てきていた。何でも電子化すればいいわけではなくて、何らかの問題に気付くきっかけを多くすることが大事。契約書等があるのをご家族が見つけて、大きな被害に至らずに済むことが散見されるので、審議の中で政府案の問題点を問うていきたい」と述べました。

 22日の本会議で質疑に立つ柚木副部会長は、政府提出の(1)個人情報が漏洩するおそれのあるデジタル改革法案(2)デジタルプラットフォーム法案(3)特定商取引法等改正案――は「デジタル問題3法案」だとし、デジタル化で便利になる分には良いけれど、マイナスの面はしっかり正さないといけないと述べました。
 今回の改正のきっかけとなったのは、ジャパンライフ事だと振り返り、「何億円、何万円の被害が出ている。今回の改正案に預託販売の全面禁止が盛り込まれた点は消費者団体も圧倒的に支持している。しかし、これと同じくらい圧倒的に支持できない内容が、これに盛り込まれてしまった。それが契約書面の電子化、デジタル化で、つまり紙で出さなくていいと。政府は原則紙だと言うが、悪徳業者、極悪業者では原則と例外が逆転する。過去の例を見れば分かる。紙がなければ、被害に遭っても証拠が残らない。電子化されたら改ざん、証拠隠滅される」おそれがあると指摘しました。消費者団体や日弁連等が大反対していると紹介したうえで、「預託販売を禁止したのと同じくらい大きな穴が開いてしまう」「政府案は消費者被害拡大法案で、われわれの法案は消費者被害防止法案だ」と述べ、政府・与党に対し、対案に理解を示し、取り入れるよう求めて行く考えを示しました。

法案概要(横).pdf
法案概要(縦).pdf
要綱(消費者契約法等の一部改正法案).pdf
法律案(消費者契約法等の一部改正法案).pdf
(参考)政府提出 特定商取引法等改正案概要.pdf

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https://cdp-japan.jp/news/20210421_1227